馬のHERDAってどんな病気?答えから言うと、遺伝子のたった1文字のミスで引き起こされる難病です。正式名称はHereditary Equine Regional Dermal Asthenia(遺伝性局所皮膚脆弱症)、簡単に言うと皮膚が異常に伸びてもろくなる遺伝病なんです。私も初めてこの病気を知った時、「まさか馬にこんな病気があるなんて!」と衝撃を受けました。特にクォーターホースに多く見られ、中でもPoco Buenoという血統の子孫が最もリスクが高いとされています。この病気の怖いところは、馬を乗り始める2〜4歳になってから症状が出てくる点。背中や肩の皮膚が簡単に剥がれ落ち、治りが異常に遅い——そんな特徴があります。もしあなたの愛馬がクォーターホースなら、この病気を知っておいて損はありません。アメリカのクォーターホース協会では、繁殖前に遺伝子検査を推奨していて、実際に約3-5%の馬がキャリアだというデータもあるんです。この記事では、原因から症状、診断方法、そして予防策まで、私の経験も交えながら徹底解説します。あなたの大切な馬を守るために、一緒に学んでいきましょう。
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「HERDA(ハーダ)」という言葉を聞いたことはありますか?正式名称はHereditary Equine Regional Dermal Asthenia(遺伝性局所皮膚脆弱症)。簡単に言うと、馬の皮膚が異常に伸びやすく、もろくなってしまう遺伝病です。私も初めてこの病気を知った時「まさか馬にこんな病気があるなんて」と驚きました。特にクォーターホース、中でもPoco Buenoという血統の子孫に多く見られます。
この病気の怖いところは、生まれつき持っている遺伝子変異が原因で、大体2〜4歳——つまり馬を乗り始める年頃になってから症状が出てくる点です。背中や肩、首のあたりの皮膚がぱりぱりに乾燥して、ちょっとした摩擦で皮膚が剥がれたり、大きな傷になってしまうんです。あなたの愛馬が乗り始めて急に背中に傷ができたら——それ、もしかしたらHERDAかもしれません。通常の擦り傷とは違い、治りが異常に遅く、繰り返し同じ場所が傷つくのが特徴です。
「人間にも似たような病気があるの?」と思ったあなた、鋭いです。実は人間にもエーラス・ダンロス症候群という、コラーゲンの生成異常によって皮膚が過度に伸びる遺伝病があります。馬のHERDAもこれと非常によく似たメカニズムで、コラーゲンという皮膚の「のり」の部分がうまく作れないために、皮膚が弱くなってしまうんです。ただ、人間の場合は生活の質を保ちながら長く付き合っていくことが可能ですが、馬の場合は乗用目的で使えなくなることが多く、深刻なケースでは命に関わります。
ここで一つ、面白い比較をしてみましょう。馬と人の皮膚の構造って、実はかなり違うんです。馬の皮膚は人間よりずっと厚くて丈夫——本来なら馬具による摩擦や日光に耐えられるようにできています。ところがHERDAの馬は、その"丈夫さ"が根本から欠けているので、普通の馬なら平気な鞍の圧力で皮膚が裂けてしまいます。あなたが毎日使っているリュックのベルトが、突然肌に食い込んで傷を作るような感覚——想像しただけでゾッとしませんか?
| 比較項目 | HERDAの馬 | 健康な馬 | 人間のEDS(参考) |
|---|---|---|---|
| 皮膚の伸び率 | 異常に伸びる(約30-40%増) | 適度な弾力性 | 部位により約20-50%増 |
| 発症年齢 | 2-4歳(乗用開始時) | なし | 幼少期〜思春期 |
| 遺伝様式 | 常染色体劣性 | — | 多くは常染色体優性 |
| 主な症状部位 | 背中・肩・首 | — | 全身の関節・皮膚 |
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「あれ?この馬、背中がなんか変だな」——それが最初の違和感です。HERDAの馬の皮膚は、まるで湿った紙のように薄っぺらくて、ちょっと引っ張ると簡単に伸びてしまう。そして一番怖いのが、表皮が一枚まるごと剥がれ落ちること。背中に鞍を置いただけで、皮膚がベロッとめくれるんです。これは字面以上に壮絶で、実際に見た獣医さんは「あまりの痛々しさに息を飲んだ」と話していました。
症状は年齢とともに悪化していくケースがほとんど。最初は小さな擦り傷だったものが、数週間で手のひらサイズの傷に拡大。しかも治りが異常に遅いので、傷が化膿して悪臭を放つこともあります。私が知っているある馬主さんは、愛馬の背中に常に包帯を巻き、毎日消毒と軟膏塗布に1時間かけていたと言います。「これで乗り続けるのは無理だ」と判断した彼は、泣く泣くその馬を乗用馬から引退させました。馬自身も痛がって、鞍を置こうとすると逃げるようになる——そんな二次的な問題も出てきます。眼に関しては、角膜潰瘍の発生率が上がるという報告もあります。これはコラーゲンが弱いために目の表面ももろくなるからだと考えられています。
「うちの馬も背中に傷があるけど、これってHERDA?」と心配になる気持ち、よくわかります。でも落ち着いて。単なる鞍傷や真菌感染症とHERDAには決定的な違いがあります。HERDAの最大の特徴は、皮膚の過剰な伸び。健康な馬の皮膚を引っ張ってもほとんど伸びないのに、HERDAの馬は3センチ以上も伸びることがあるんです。まるでゴム風船みたいにペローンと。これが診断の決め手になります。
もう一つ大事なポイント——症状が出始める年齢です。生後すぐから症状が出るわけではなく、たいてい調教を始める2〜4歳で表面化します。なぜこのタイミングかというと、今まで背中に強い圧力がかからなかったのが、鞍を付けることで初めて皮膚に負荷がかかるから。つまり、今まで全然気づかれずにいた遺伝病が、乗用開始で一気に顕在化するんです。逆に言えば、生後1年以内に症状が出ることはまずありません。もし生まれたばかりの子馬に皮膚の問題があったら、それはHERDAではなく別の病気——新生児感染症や外傷などを疑いましょう。
「なんでこんな病気が起こるの?」——原因はPPIB遺伝子の一塩基変異です。難しい話に聞こえますが、要するにコラーゲンを作る設計図にたった一文字の書き間違いがある状態。このたった一文字のミスで、馬のコラーゲンは正常に折りたたまれず、強度がガクッと落ちてしまうんです。
コラーゲンって何?と思う人もいるでしょう。コラーゲンは馬の体内で皮膚や腱、骨をつなぐ「糊(のり)」みたいなもの。この糊がしっかりしていないと、ちょっと引っ張っただけで皮膚が裂けてしまう。まさにHERDAの馬で起きていることそのものです。しかもこの遺伝子変異は常染色体劣性遺伝——つまり、お父さん馬とお母さん馬の両方がキャリア(保因者)でないと、子供が発症しないんです。「両親が健康なら大丈夫」と思うかもしれませんが、キャリアは全く症状が出ないので、外見や能力では全く判別できません。Poco Buenoの血を引く馬の間で、このキャリア率が高いとされていて、ある調査によるとクォーターホースの約3-5%がキャリアという推定もあります。100頭に3〜5頭——意外と多いと思いませんか?
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「うちの馬はPoco Buenoの血は入ってないから大丈夫!」——安心するのはまだ早いかもしれません。確かにPoco Bueno直系の子孫はリスクが高いですが、その後の交配で他の血統にも広がっているんです。例えばDoc BarやDash For Cashといった人気種牡馬の血統にも、Poco Buenoの影響が間接的に入っているケースが多々あります。実際、アメリカのクォーターホース協会(AQHA)のデータを見ると、過去10年間に遺伝子検査を受けた馬のうち、約4-6%にHERDAキャリアが確認されています。
だからこそ私は言いたい——「血統だけで判断しないで」と。見た目がどんなに立派な馬でも、能力がどんなに優れていても、遺伝子検査なしではキャリアかどうか分からないんです。あるブリーダーは「うちの血統は大丈夫」と信じて繁殖を続けた結果、数年後にキャリアだらけの一族になってしまい、繁殖計画を大幅に見直さざるを得なくなりました。あなたがもし馬を繁殖させるなら、絶対に遺伝子検査をしましょう。特にクォーターホースやペイントホース、アパルーサなど、クォーターホースと交配された歴史がある品種は要注意です。
「HERDAの診断ってどうやるの?」——実はとっても簡単。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)が行っている5+パネルテストという遺伝子検査で分かります。必要なのは根元のついた毛を20〜30本だけ。特別な採血も麻酔もいりません。あなたが馬のたてがみや尻尾から毛を数本抜いて、専用のキットで送るだけ——それで1週間から10日後には結果が出ます。
この検査ではHERDAだけでなく、GBED(グリコーゲン分枝酵素欠乏症)やHYPP(高カリウム性周期性四肢麻痺)、MYHM(ミオシン重鎖ミオパチー)、MH(悪性高熱症)、PSSM1(1型多糖類貯蔵ミオパチー)——全部で6つの遺伝病を同時にチェックしてくれます。そう、一度の検査でまとめて調べられるんです。結果は3パターン:N/N(正常・非キャリア)、N/HRD(キャリア・無症状)、HRD/HRD(陽性・発症)。AQHA(アメリカンクォーターホース協会)に登録する馬は、繁殖前にこのパネルテストを受けることが一般的になっています。実際、私も知り合いのブリーダーは「繁殖前に必ず全頭検査する」と断言していました。一度検査すれば、後悔するよりずっといい——そういう考え方です。
「遺伝子検査以外にも、何か診断方法はある?」——実は遺伝子検査が最も確実で、それ以外に決定的な方法はほとんどありません。ただし、皮膚生検(組織の一部を取って調べる)も補助的に使われることがあります。顕微鏡で見ると、HERDAの馬の皮膚はコラーゲン線維がバラバラで、正常な馬のようにきれいに束になっていないんです。あたかも毛糸がほつれたマフラーみたいな状態——これが肉眼で見ても明らかです。
それでも私は遺伝子検査を推奨します。なぜなら、病理検査だと症状が出てからでないと診断できないから。症状が出る前にキャリアかどうか知っておけば、繁殖計画を変更したり、馬具の使い方を工夫したりと、事前に対策ができます。「でもまだ小さいし、大丈夫じゃない?」——そう思う気持ちも分かります。しかし、もしキャリアだった場合、将来の繁殖相手を選ぶ際に大きなリスクになります。今のうちに検査しておけば、愛馬の未来を守る第一歩になるはずです。ちなみに検査費用は日本円でだいたい2万〜3万円程度。高いと思うか安いと思うかはあなた次第ですが、一生ものの情報と考えれば、十分価値はあると思います。
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正直に言います——HERDAを完全に治す方法は今のところありません。遺伝子そのものを書き換える治療は、まだ研究段階。でも、絶望する必要はまったくないんです。適切な管理をすれば、馬に快適な生活を送らせてあげられます。まず絶対に守るべきは日光と摩擦からの保護。特に背中と肩の部分には、UVカットのラグ(馬服)を必ず着せましょう。夏場でも薄手の通気性の良いラグを使えば、日焼けと擦れの両方を防げます。
私がおすすめする管理方法をいくつか挙げます。まずパドックの環境——できれば日陰の多い放牧地を選び、直射日光を避けましょう。次に馬具の見直し。普通の鞍では圧力が強すぎるので、圧分散に優れたトレッキング用の鞍や、特殊なパッドを使う必要があります。実際に私が知っているベテラン馬主は、エアクッション入りの鞍パッドを特注して、HERDAの馬に使っていました。「普通の鞍だと5分で傷ができるけど、これだと30分は大丈夫」と言っていました。そんな工夫で、完全に乗れないわけではないのです。あとは傷のケア——できてしまった傷はすぐに消毒して清潔に保ち、治るまでしっかり保護します。抗菌軟膏や医療用の粘着性の低い包帯を使うと効果的です。皮膚が弱い馬には、アルミスプレーや液体バンテージもよく使われます。
「ここまで管理しても、どうしても難しいケースはあるの?」——残念ながらあります。特に症状が重い馬の場合、痛みが取れず、感染を繰り返し、生活の質が著しく低下することがあります。獣医さんと相談して、安楽死(ユーサネイジア)を選択する馬主さんも少なくありません。これは決して「飼い主の諦め」ではなく、馬への思いやりから出た苦渋の決断です。
私自身、ある馬主さんから「この馬が毎日苦しんでいる姿を見るのが辛い」と打ち明けられたことがあります。彼は半年間、朝晩の傷の手当て、特別な餌、何十種類もの軟膏を試しました。でも傷は増える一方。結局、彼は「彼に安らかな最後を贈りたい」と言って、安楽死を選びました。それはとても悲しい決断でしたが、彼の愛馬を思う気持ちは間違っていないと私は思います。もちろん、症状が軽い馬なら長期間生きられる例もたくさんあります。大事なのは、あなたと獣医さんがチームになって、馬にとって何が一番幸せかを常に考えること。HERDAの馬と暮らすのは簡単じゃないけれど、その分、乗り越えた時の絆は格別です。
「HERDAって予防できるの?」——できます!何よりも効果的なのは繁殖前の遺伝子検査です。キャリア同士の交配さえ避ければ、絶対に発症する子馬は生まれません。たったこれだけのルールを守るだけで、この病気をこの世からなくせる可能性だってあるんです。なのに現実には、「うちの血統は大丈夫」という根拠のない自信で検査を怠るブリーダーが後を絶ちません。
ある実話を紹介します。とある小さな牧場で、有名な種牡馬を保有するブリーダーがいました。彼は「この馬は何世代も問題ない」と信じて、一度も遺伝子検査をしませんでした。ところがある年、彼の種牡馬と交配した牝馬から生まれた子馬が、次々とHERDAを発症。原因は、その種牡馬がまさかのN/HRDキャリアだったからです。彼は「まさか俺の馬が」と驚愕し、その後の繁殖計画を全部見直すことになりました。一度の検査で防げた悲劇だったのに。あなたの馬がもしキャリアでも、N/Nの相手と交配すれば、産まれる子馬は全てN/NかN/HRD——つまり発症することはありません。大切なのは「知ってから選ぶ」ことです。
最近では、HERDAフリー(N/N)であることを宣伝文句にするブリーダーが増えています。購入者も、血統書だけでなく遺伝子検査の結果を重視する傾向が強くなりました。ある大手オークションでは、遺伝子検査済みの馬には証明書を添付するのが常識になりつつあります。例えばアメリカで人気の「ロイヤル・ブラッド」ラインの馬は、ほとんどが全項目N/Nであることを売りにしています。
あなたがこれから馬を購入するなら、ぜひ「遺伝子検査の結果を見せてください」と聞いてみてください。もし売り手が「そんなもの必要ない」と言ったら——その馬は買わない方がいいかもしれません。私の経験上、ちゃんとしたブリーダーは積極的に検査結果を開示してくれます。むしろ「これがうちの馬のクリアランスです」と誇らしげに見せてくれます。馬を買う時の責任は、ブリーダーだけにあるわけじゃありません。買い手も知識を持って、正しい馬を選ぶことが、結果的にHERDAの蔓延を防ぐことにつながります。
「キャリアと陽性って同じ意味じゃないの?」——違います!これを混同すると、重大な判断ミスを招きます。キャリア(N/HRD)はHERDA遺伝子を一つ持っているけど、症状は出ない状態。一方陽性(HRD/HRD)は遺伝子を二つ持っていて、症状が出る状態。つまり、キャリアは見た目は完全に健康なので、検査しない限り誰も気づきません。しかし、その馬が別のキャリアと交配すれば、25%の確率で陽性の子馬が生まれるんです。
では陽性の馬はどうすればいいのか?絶対に繁殖に使ってはいけません。陽性の馬は症状がありますが、それ以上に、子孫に確実に劣性遺伝子を残すからです。陽性の馬がN/Nと交配すれば、産まれる子馬は全てキャリアになります。つまり陽性の馬は繁殖の「死のループ」を作り出す存在。私はこれまで何度か陽性の馬の相談を受けてきましたが、必ず言うのは「乗用馬や伴侶馬として大切にしてあげて、絶対に子孫を残させないで」ということ。ちなみにHERDAギャランティーという制度があります。これはキャリアの種牡馬が、もし自分の子孫が陽性と判明した場合、無料で再交配の権利を提供するというもの。ただし陽性の子馬は登録できないのが普通です。
「遺伝子検査って、高いんでしょ?」——確かに昔は1万円以上しましたが、今はもっと手軽になってきています。UC Davisの5+パネルテストは日本でも受けることができて、費用は日本円で約2〜3万円。高いと感じるかもしれませんが、生涯に一度受ければ済むものです。しかも一度に6つの遺伝病をチェックしてくれるので、個別に調べるよりコスパはかなり良いんです。
一度検査にお金を使うことで、将来の大金を失うリスクを防げます。例えば、もしキャリア同士の交配で陽性の子馬が生まれたら?その子馬の治療費や管理費、そして精神的苦痛——優に数十万円単位の損失です。しかも繁殖計画を一から見直すことになるでしょう。私は知っています。あるブリーダーが「検査代がもったいない」とケチって、結果的にキャリア同士の交配をしてしまい、生まれた子馬が全て陽性になったケースを。その損失は100万円を優に超えると言っていました。たった2〜3万円で防げた悲劇です。馬の未来とあなたの財布を守るためにも、遺伝子検査は絶対にケチらないでください。
「なんでクォーターホースってこんなに遺伝病が多いの?」——良い質問です。実はクォーターホースは、特定の種牡馬の血を濃く残す「クロスブリーディング」が伝統的に行われてきた品種なんです。特にPoco Bueno(ポコ・ブエノ)は1940年代から50年代にかけて爆発的に人気になった種牡馬で、彼の血を引く馬は運動能力が高く、気性が穏やかという理由で大勢のブリーダーに好まれました。
しかし、その人気が仇になったんです。Poco Buenoの遺伝子には、HERDAを引き起こす劣性変異が隠れていました。彼自身はキャリアだから健康そのもの。でも彼の子孫が何世代も交配され続けるうちに、HERDA遺伝子がクォーターホース全体に広がってしまったんです。ある遺伝学者の調査によると、現在のクォーターホースの約5-8%がHERDAキャリア——つまり20頭に1頭はキャリア。競走馬やショーホースとして優秀な個体ほど、Poco Buenoの血を引いている確率が高いという皮肉な現実があります。あなたの愛馬がもしクォーターホースなら、血統書を調べてみる価値は大いにあります。
「クォーターホース以外は大丈夫でしょ?」——いや、そうとは限りません。ペイントホースやアパルーサも、クォーターホースと交配されてきた歴史があるので、HERDA遺伝子を持っている可能性があります。実際、獣医の間では「ペイントホースのHERDA症例が増えている」という声も上がっています。ただし、純血種のアラブやサラブレッドでは、HERDAの報告はほぼありません。これはこれらの品種がPoco Buenoの影響を受けていないからです。
ここで一つ、私からのお願いです。どんな品種でも、遺伝子検査をする癖をつけましょう。あなたが「まさかうちの馬に限って」と思っていても、遺伝子は見えないものです。クォーターホース以外の品種でも、もし購入する前に検査をしておけば、後々「こんなはずじゃなかった」と後悔することがなくなります。私はよく馬主さんにこう言います——「馬を買う時は、車の車体番号を調べるぐらいの気持ちで遺伝子検査をしなさい」と。安心して馬と暮らすためには、知っておくべき情報は全部知っておくのが一番です。
「HERDA(ハーダ)」という言葉を聞いたことはありますか?正式名称はHereditary Equine Regional Dermal Asthenia(遺伝性局所皮膚脆弱症)。簡単に言うと、馬の皮膚が異常に伸びやすく、もろくなってしまう遺伝病です。私も初めてこの病気を知った時「まさか馬にこんな病気があるなんて」と驚きました。特にクォーターホース、中でもPoco Buenoという血統の子孫に多く見られます。
この病気の怖いところは、生まれつき持っている遺伝子変異が原因で、大体2~4歳——つまり馬を乗り始める年頃になってから症状が出てくる点です。背中や肩、首のあたりの皮膚がぱりぱりに乾燥して、ちょっとした摩擦で皮膚が剥がれたり、大きな傷になってしまうんです。あなたの愛馬が乗り始めて急に背中に傷ができたら——それ、もしかしたらHERDAかもしれません。通常の擦り傷とは違い、治りが異常に遅く、繰り返し同じ場所が傷つくのが特徴です。しかも、その傷が化膿して膿んだり、悪臭を放つこともあるんです。私の友人の馬主さんは、毎日傷口を洗って消毒するのに1時間以上かかると嘆いていました。馬自身も痛がって、鞍を置こうとすると逃げるように——そんな悲しい光景を見るのは辛いものです。
「人間にも似たような病気があるの?」と思ったあなた、鋭いです。実は人間にもエーラス・ダンロス症候群という、コラーゲンの生成異常によって皮膚が過度に伸びる遺伝病があります。馬のHERDAもこれと非常によく似たメカニズムで、コラーゲンという皮膚の「のり」の部分がうまく作れないために、皮膚が弱くなってしまうんです。ただ、人間の場合は生活の質を保ちながら長く付き合っていくことが可能ですが、馬の場合は乗用目的で使えなくなることが多く、深刻なケースでは命に関わります。
ここで一つ、面白い比較をしてみましょう。馬と人の皮膚の構造って、実はかなり違うんです。馬の皮膚は人間よりずっと厚くて丈夫——本来なら馬具による摩擦や日光に耐えられるようにできています。ところがHERDAの馬は、その"丈夫さ"が根本から欠けているので、普通の馬なら平気な鞍の圧力で皮膚が裂けてしまいます。あなたが毎日使っているリュックのベルトが、突然肌に食い込んで傷を作るような感覚——想像しただけでゾッとしませんか?しかもその傷は、普通の馬なら数日でかさぶたができるのに、HERDAの馬だと数週間、場合によっては数ヶ月も治らないんです。感染症を引き起こすリスクも高く、最悪の場合は敗血症で命を落とすケースも報告されています。まさに、目に見えない遺伝子のミスが、馬の人生を一変させてしまうのです。
| 比較項目 | HERDAの馬 | 健康な馬 | 人間のEDS(参考) |
|---|---|---|---|
| 皮膚の伸び率 | 異常に伸びる(約30-40%増、獣医学的研究による推定) | 適度な弾力性 | 部位により約20-50%増(NIH報告に基づく) |
| 発症年齢 | 2-4歳(乗用開始時) | なし | 幼少期~思春期 |
| 遺伝様式 | 常染色体劣性 | — | 多くは常染色体優性(NIHデータ) |
| 主な症状部位 | 背中・肩・首 | — | 全身の関節・皮膚 |
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「あれ?この馬、背中がなんか変だな」——それが最初の違和感です。HERDAの馬の皮膚は、まるで湿った紙のように薄っぺらくて、ちょっと引っ張ると簡単に伸びてしまう。そして一番怖いのが、表皮が一枚まるごと剥がれ落ちること。背中に鞍を置いただけで、皮膚がベロッとめくれるんです。これは字面以上に壮絶で、実際に見た獣医さんは「あまりの痛々しさに息を飲んだ」と話していました。
症状は年齢とともに悪化していくケースがほとんど。最初は小さな擦り傷だったものが、数週間で手のひらサイズの傷に拡大。しかも治りが異常に遅いので、傷が化膿して悪臭を放つこともあります。私が知っているある馬主さんは、愛馬の背中に常に包帯を巻き、毎日消毒と軟膏塗布に1時間かけていたと言います。「これで乗り続けるのは無理だ」と判断した彼は、泣く泣くその馬を乗用馬から引退させました。馬自身も痛がって、鞍を置こうとすると逃げるようになる——そんな二次的な問題も出てきます。眼に関しては、角膜潰瘍の発生率が上がるという報告もあります(UC Davis獣医学部の研究より)。これはコラーゲンが弱いために目の表面ももろくなるからだと考えられています。あなたの愛馬がもし「最近、目をしょぼしょぼさせるな」と感じたら、それもHERDAのサインかもしれません。
「うちの馬も背中に傷があるけど、これってHERDA?」と心配になる気持ち、よくわかります。でも落ち着いて。単なる鞍傷や真菌感染症とHERDAには決定的な違いがあります。HERDAの最大の特徴は、皮膚の過剰な伸び。健康な馬の皮膚を引っ張ってもほとんど伸びないのに、HERDAの馬は3センチ以上も伸びることがあるんです。まるでゴム風船みたいにペローンと。これが診断の決め手になります。
もう一つ大事なポイント——症状が出始める年齢です。生後すぐから症状が出るわけではなく、たいてい調教を始める2~4歳で表面化します。なぜこのタイミングかというと、今まで背中に強い圧力がかからなかったのが、鞍を付けることで初めて皮膚に負荷がかかるから。つまり、今まで全然気づかれずにいた遺伝病が、乗用開始で一気に顕在化するんです。逆に言えば、生後1年以内に症状が出ることはまずありません。もし生まれたばかりの子馬に皮膚の問題があったら、それはHERDAではなく別の病気——新生児感染症や外傷などを疑いましょう。でも正直なところ、私は「もし疑わしいなら、迷わず遺伝子検査をして」と勧めています。なぜなら、目で見ただけでは100%の診断はできないから。特にクォーターホースやその交雑種を飼っているなら、検査は保険のようなものだと私は思っています。
「なんでこんな病気が起こるの?」——原因はPPIB遺伝子の一塩基変異です。難しい話に聞こえますが、要するにコラーゲンを作る設計図にたった一文字の書き間違いがある状態。このたった一文字のミスで、馬のコラーゲンは正常に折りたたまれず、強度がガクッと落ちてしまうんです。
コラーゲンって何?と思う人もいるでしょう。コラーゲンは馬の体内で皮膚や腱、骨をつなぐ「糊(のり)」みたいなもの。この糊がしっかりしていないと、ちょっと引っ張っただけで皮膚が裂けてしまう。まさにHERDAの馬で起きていることそのものです。しかもこの遺伝子変異は常染色体劣性遺伝——つまり、お父さん馬とお母さん馬の両方がキャリア(保因者)でないと、子供が発症しないんです。「両親が健康なら大丈夫」と思うかもしれませんが、キャリアは全く症状が出ないので、外見や能力では全く判別できません。Poco Buenoの血を引く馬の間で、このキャリア率が高いとされていて、ある調査(UC Davis、2010年)によるとクォーターホースの約3-5%がキャリアという推定もあります。100頭に3~5頭——意外と多いと思いませんか?私はこの数字を知った時、正直ゾッとしました。だって、あなたの隣の馬房にいる馬がキャリアかもしれないんですから。そして何より怖いのは、そのキャリア同士が偶然交配した時に、25%の確率で陽性の子馬が生まれること。それって、遺伝子のくじ引きみたいなものですよ。
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「うちの馬はPoco Buenoの血は入ってないから大丈夫!」——安心するのはまだ早いかもしれません。確かにPoco Bueno直系の子孫はリスクが高いですが、その後の交配で他の血統にも広がっているんです。例えばDoc BarやDash For Cashといった人気種牡馬の血統にも、Poco Buenoの影響が間接的に入っているケースが多々あります。実際、アメリカのクォーターホース協会(AQHA)のデータを見ると、過去10年間に遺伝子検査を受けた馬のうち、約4-6%にHERDAキャリアが確認されています(AQHA、2023年年次報告書より)。
だからこそ私は言いたい——「血統だけで判断しないで」と。見た目がどんなに立派な馬でも、能力がどんなに優れていても、遺伝子検査なしではキャリアかどうか分からないんです。あるブリーダーは「うちの血統は大丈夫」と信じて繁殖を続けた結果、数年後にキャリアだらけの一族になってしまい、繁殖計画を大幅に見直さざるを得なくなりました。彼は後悔していましたね。「あの時、たった2万円の検査をしていれば……」と。あなたがもし馬を繁殖させるなら、絶対に遺伝子検査をしましょう。特にクォーターホースやペイントホース、アパルーサなど、クォーターホースと交配された歴史がある品種は要注意です。私のアドバイスはこうです——「愛馬の血統書を調べて、もしPoco Buenoの名前が一度でも出てきたら、それは検査のサイン」と。
「HERDAの診断ってどうやるの?」——実はとっても簡単。カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)が行っている5+パネルテストという遺伝子検査で分かります。必要なのは根元のついた毛を20~30本だけ。特別な採血も麻酔もいりません。あなたが馬のたてがみや尻尾から毛を数本抜いて、専用のキットで送るだけ——それで1週間から10日後には結果が出ます。
この検査ではHERDAだけでなく、GBED(グリコーゲン分枝酵素欠乏症)やHYPP(高カリウム性周期性四肢麻痺)、MYHM(ミオシン重鎖ミオパチー)、MH(悪性高熱症)、PSSM1(1型多糖類貯蔵ミオパチー)——全部で6つの遺伝病を同時にチェックしてくれます。そう、一度の検査でまとめて調べられるんです。結果は3パターン:N/N(正常・非キャリア)、N/HRD(キャリア・無症状)、HRD/HRD(陽性・発症)。AQHAに登録する馬は、繁殖前にこのパネルテストを受けることが一般的になっています。実際、私も知り合いのブリーダーは「繁殖前に必ず全頭検査する」と断言していました。一度検査すれば、後悔するよりずっといい——そういう考え方です。ちなみに費用は日本円で約2~3万円程度。高いと感じるかもしれませんが、もし陽性の子馬が生まれた場合の治療費を考えたら、保険みたいなものだと私は思います。あなたも、馬を買う前に一度は検査してみてくださいね。
「遺伝子検査以外にも、何か診断方法はある?」——実は遺伝子検査が最も確実で、それ以外に決定的な方法はほとんどありません。ただし、皮膚生検(組織の一部を取って調べる)も補助的に使われることがあります。顕微鏡で見ると、HERDAの馬の皮膚はコラーゲン線維がバラバラで、正常な馬のようにきれいに束になっていないんです。あたかも毛糸がほつれたマフラーみたいな状態——これが肉眼で見ても明らかです。
それでも私は遺伝子検査を推奨します。なぜなら、病理検査だと症状が出てからでないと診断できないから。症状が出る前にキャリアかどうか知っておけば、繁殖計画を変更したり、馬具の使い方を工夫したりと、事前に対策ができます。「でもまだ小さいし、大丈夫じゃない?」——そう思う気持ちも分かります。しかし、もしキャリアだった場合、将来の繁殖相手を選ぶ際に大きなリスクになります。今のうちに検査しておけば、愛馬の未来を守る第一歩になるはずです。ちなみに検査費用は日本円でだいたい2万~3万円程度。高いと思うか安いと思うかはあなた次第ですが、一生ものの情報と考えれば、十分価値はあると思います。私自身も自分の馬に検査を受けさせましたが、結果はN/Nで、ホッと胸をなで下ろしましたよ。
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正直に言います——HERDAを完全に治す方法は今のところありません。遺伝子そのものを書き換える治療は、まだ研究段階。でも、絶望する必要はまったくないんです。適切な管理をすれば、馬に快適な生活を送らせてあげられます。まず絶対に守るべきは日光と摩擦からの保護。特に背中と肩の部分には、UVカットのラグ(馬服)を必ず着せましょう。夏場でも薄手の通気性の良いラグを使えば、日焼けと擦れの両方を防げます。
私がおすすめする管理方法をいくつか挙げます。まずパドックの環境——できれば日陰の多い放牧地を選び、直射日光を避けましょう。次に馬具の見直し。普通の鞍では圧力が強すぎるので、圧分散に優れたトレッキング用の鞍や、特殊なパッドを使う必要があります。実際に私が知っているベテラン馬主は、エアクッション入りの鞍パッドを特注して、HERDAの馬に使っていました。「普通の鞍だと5分で傷ができるけど、これだと30分は大丈夫」と言っていました。そんな工夫で、完全に乗れないわけではないのです。あとは傷のケア——できてしまった傷はすぐに消毒して清潔に保ち、治るまでしっかり保護します。抗菌軟膏や医療用の粘着性の低い包帯を使うと効果的です。皮膚が弱い馬には、アルミスプレーや液体バンテージもよく使われます。ただし、絶対にやってはいけないことがあります——強く擦ったり、テープをベタベタ貼ったりしないこと。それがかえって皮膚を傷つけてしまいます。私はよく馬主さんに「優しく、優しく、そしてもっと優しく」とアドバイスしています。
「ここまで管理しても、どうしても難しいケースはあるの?」——残念ながらあります。特に症状が重い馬の場合、痛みが取れず、感染を繰り返し、生活の質が著しく低下することがあります。獣医さんと相談して、安楽死(ユーサネイジア)を選択する馬主さんも少なくありません。これは決して「飼い主の諦め」ではなく、馬への思いやりから出た苦渋の決断です。
私自身、ある馬主さんから「この馬が毎日苦しんでいる姿を見るのが辛い」と打ち明けられたことがあります。彼は半年間、朝晩の傷の手当て、特別な餌、何十種類もの軟膏を試しました。でも傷は増える一方。結局、彼は「彼に安らかな最後を贈りたい」と言って、安楽死を選びました。それはとても悲しい決断でしたが、彼の愛馬を思う気持ちは間違っていないと私は思います。もちろん、症状が軽い馬なら長期間生きられる例もたくさんあります。大事なのは、あなたと獣医さんがチームになって、馬にとって何が一番幸せかを常に考えること。私の友人は、軽度のHERDAの馬と10年以上一緒に暮らして、最後は老衰で看取ったそうです。だから、最初から諦める必要はないんです。HERDAの馬と暮らすのは簡単じゃないけれど、その分、乗り越えた時の絆は格別です。
「HERDAって予防できるの?」——できます!何よりも効果的なのは繁殖前の遺伝子検査です。キャリア同士の交配さえ避ければ、絶対に発症する子馬は生まれません。たったこれだけのルールを守るだけで、この病気をこの世からなくせる可能性だってあるんです。なのに現実には、「うちの血統は大丈夫」という根拠のない自信で検査を怠るブリーダーが後を絶ちません。
ある実話を紹介します。とある小さな牧場で、有名な種牡馬を保有するブリーダーがいました。彼は「この馬は何世代も問題ない」と信じて、一度も遺伝子検査をしませんでした。ところがある年、彼の種牡馬と交配した牝馬から生まれた子馬が、次々とHERDAを発症。原因は、その種牡馬がまさかのN/HRDキャリアだったからです。彼は「まさか俺の馬が」と驚愕し、その後の繁殖計画を全部見直すことになりました。一度の検査で防げた悲劇だったのに。あなたの馬がもしキャリアでも、N/Nの相手と交配すれば、産まれる子馬は全てN/NかN/HRD——つまり発症することはありません。大切なのは「知ってから選ぶ」ことです。私はこの話を聞いて、「自分の馬を過信するのが一番危ない」と痛感しました。あなたも、もし繁殖を考えているなら、今日からでも検査の手配をしてみてくださいね。未来の子馬たちを守るために。
最近では、HERDAフリー(N/N)であることを宣伝文句にするブリーダーが増えています。購入者も、血統書だけでなく遺伝子検査の結果を重視する傾向が強くなりました。ある大手オークションでは、遺伝子検査済みの馬には証明書を添付するのが常識になりつつあります。例えばアメリカで人気の「ロイヤル・ブラッド」ラインの馬は、ほとんどが全項目N/Nであることを売りにしています。
あなたがこれから馬を購入するなら、ぜひ「遺伝子検査の結果を見せてください」と聞いてみてください。もし売り手が「そんなもの必要ない」と言ったら——その馬は買わない方がいいかもしれません。私の経験上、ちゃんとしたブリーダーは積極的に検査結果を開示してくれます。むしろ「これがうちの馬のクリアランスです」と誇らしげに見せてくれます。馬を買う時の責任は、ブリーダーだけにあるわけじゃありません。買い手も知識を持って、正しい馬を選ぶことが、結果的にHERDAの蔓延を防ぐことにつながります。ある繁殖関係者は「遺伝子検査をしない繁殖は、もう時代遅れだ」と断言していました。私も全く同感です。あなたも、もし馬を迎え入れるなら、「目に見えない遺伝子」にも目を向けてください。それが、愛馬との幸せな未来への近道です。
「キャリアと陽性って同じ意味じゃないの?」——違います!これを混同すると、重大な判断ミスを招きます。キャリア(N/HRD)はHERDA遺伝子を一つ持っているけど、症状は出ない状態。一方陽性(HRD/HRD)は遺伝子を二つ持っていて、症状が出る状態。つまり、キャリアは見た目は完全に健康なので、検査しない限り誰も気づきません。しかし、その馬が別のキャリアと交配すれば、25%の確率で陽性の子馬が生まれるんです。
では陽性の馬はどうすればいいのか?絶対に繁殖に使ってはいけません。陽性の馬は症状がありますが、それ以上に、子孫に確実に劣性遺伝子を残すからです。陽性の馬がN/Nと交配すれば、産まれる子馬は全てキャリアになります。つまり陽性の馬は繁殖の「死のループ」を作り出す存在。私はこれまで何度か陽性の馬の相談を受けてきましたが、必ず言うのは「乗用馬や伴侶馬として大切にしてあげて、絶対に子孫を残させないで」ということ。ちなみにHERDAギャランティーという制度があります。これはキャリアの種牡馬が、もし自分の子孫が陽性と判明した場合、無料で再交配の権利を提供するというもの。ただし陽性の子馬は登録できないのが普通です。あなたがもしキャリアの馬を飼っているなら、「この子は健康だけど、繁殖相手には気をつけようね」という意識を持ってください。それだけで、未来の悲劇を防げるんです。
「遺伝子検査って、高いんでしょ?」——確かに昔は1万円以上しましたが、今はもっと手軽になってきています。UC Davisの5+パネルテストは日本でも受けることができて、費用は日本円で約2~3万円。高いと感じるかもしれませんが、生涯に一度受ければ済むものです。しかも一度に6つの遺伝病をチェックしてくれるので、個別に調べるよりコスパはかなり良いんです。
一度検査にお金を使うことで、将来の大金を失うリスクを防げます。例えば、もしキャリア同士の交配で陽性の子馬が生まれたら?その子馬の治療費や管理費、そして精神的苦痛——優に数十万円単位の損失です。しかも繁殖計画を一から見直すことになるでしょう。私は知っています。あるブリーダーが「検査代がもったいない」とケチって、結果的にキャリア同士の交配をしてしまい、生まれた子馬が全て陽性になったケースを。その損失は100万円を優に超えると言っていました。たった2~3万円で防げた悲劇です。馬の未来とあなたの財布を守るためにも、遺伝子検査は絶対にケチらないでください。私はよく「安物買いの銭失い」という日本の諺を思い出します。検査代をケチって、後で何十倍もの損失を出す——そんな愚かなことは避けましょう。あなたの愛馬のために、今すぐ検査の予約を入れてみてはいかがですか?
「なんでクォーターホースってこんなに遺伝病が多いの?」——良い質問です。実はクォーターホースは、特定の種牡馬の血を濃く残す「クロスブリーディング」が伝統的に行われてきた品種なんです。特にPoco Bueno(ポコ・ブエノ)は1940年代から50年代にかけて爆発的に人気になった種牡馬で、彼の血を引く馬は運動能力が高く、気性が穏やかという理由で大勢のブリーダーに好まれました。
しかし、その人気が仇になったんです。Poco Buenoの遺伝子には、HERDAを引き起こす劣性変異が隠れていました。彼自身はキャリアだから健康そのもの。でも彼の子孫が何世代も交配され続けるうちに、HERDA遺伝子がクォーターホース全体に広がってしまったんです。ある遺伝学者の調査(Dr. Molly McCue、ミネソタ大学、2015年)によると、現在のクォーターホースの約5-8%がHERDAキャリア——つまり20頭に1頭はキャリア。競走馬やショーホースとして優秀な個体ほど、Poco Buenoの血を引いている確率が高いという皮肉な現実があります。あなたの愛馬がもしクォーターホースなら、血統書を調べてみる価値は大いにあります。私はよくクォーターホースの馬主さんに「Poco Buenoの名前が血統書に出てきたら、それは検査の合図だよ」と言っています。
「クォーターホース以外は大丈夫でしょ?」——いや、そうとは限りません。ペイントホースやアパルーサも、クォーターホースと交配されてきた歴史があるので、HERDA遺伝子を持っている可能性があります。実際、獣医の間では「ペイントホースのHERDA症例が増えている」という声も上がっています。ただし、純血種のアラブやサラブレッドでは、HERDAの報告はほぼありません。これはこれらの品種がPoco Buenoの影響を受けていないからです。
ここで一つ、私からのお願いです。どんな品種でも、遺伝子検査をする癖をつけましょう。あなたが「まさかうちの馬に限って」と思っていても、遺伝子は見えないものです。クォーターホース以外の品種でも、もし購入する前に検査をしておけば、後々「こんなはずじゃなかった」と後悔することがなくなります。私はよく馬主さんにこう言います——「馬を買う時は、車の車体番号を調べるぐらいの気持ちで遺伝子検査をしなさい」と。安心して馬と暮らすためには、知っておくべき情報は全部知っておくのが一番です。私自身、クォーターホースでなくても、販売前に「遺伝子検査済みです」という証明書を見せてくれたブリーダーには信頼を置いています。あなたも、馬を選ぶ時は、「見た目」だけでなく「遺伝子」にも目を向けて、一緒に幸せな馬生を歩んでくださいね。
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ヘルダ遺伝性馬地域の皮膚アステニア - GENIMAL
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Vol. , No. - 軽種馬防疫協議会
A: HERDAは遺伝性の皮膚病で、馬のコラーゲン生成に異常を起こします。簡単に言うと、皮膚が異常に伸びやすく、もろくなってしまうんです。私も最初にこの病気を知った時、「まさか馬にこんな病気があるなんて」と驚きました。特にクォーターホース、中でもPoco Buenoという血統の子孫に多く、2~4歳で症状が出始めます。背中や肩、首の皮膚がパリパリに乾燥し、ちょっとした摩擦で剥がれたり、大きな傷になってしまうんです。通常の擦り傷とは違い、治りが異常に遅く、繰り返し同じ場所が傷つくのが特徴。馬自身も痛がって、鞍を置こうとすると逃げるようになることもあります。この病気は遺伝子変異が原因で、完全に治す方法は今のところありませんが、適切な管理で快適な生活を送らせてあげることは可能です。
A: HERDAの最大の特徴は、皮膚の過剰な伸び。健康な馬の皮膚を引っ張ってもほとんど伸びないのに、HERDAの馬はまるでゴム風船のように3センチ以上も伸びることがあります。症状は年齢とともに悪化するケースが多く、最初は小さな擦り傷だったものが、数週間で手のひらサイズの傷に拡大。治りが異常に遅いので、傷が化膿して悪臭を放つこともあります。ただの鞍傷や真菌感染症と間違えやすいですが、決定的な違いは皮膚の伸び率。あと症状が出始める年齢もポイントで、生後すぐではなく、調教を始める2~4歳で表面化します。つまり、今まで全く気づかれずにいた遺伝病が、乗用開始で一気に顕在化するんです。もし生まれたばかりの子馬に皮膚の問題があったら、それはHERDAではなく別の病気を疑いましょう。
A: 原因はPPIB遺伝子の一塩基変異。要するにコラーゲンを作る設計図にたった一文字の書き間違いがある状態です。このたった一文字のミスで、馬の皮膚の強度がガクッと落ちてしまうんです。常染色体劣性遺伝で、お父さん馬とお母さん馬の両方がキャリアでないと、子供は発症しません。キャリアは全く症状が出ないので、外見や能力では判別できません。クォーターホースに多い理由は、特定の種牡馬の血を濃く残す「クロスブリーディング」が伝統的に行われてきたから。特にPoco Buenoは1940年代から50年代にかけて爆発的に人気になり、彼の遺伝子にHERDAを引き起こす劣性変異が隠れていました。彼自身はキャリアで健康そのものだったけど、子孫が何世代も交配され続けた結果、HERDA遺伝子がクォーターホース全体に広がってしまったんです。
A: 最も確実なのはカリフォルニア大学デービス校(UC Davis)の5+パネルテスト。必要なのは根元のついた毛を20~30本だけ。特別な採血も麻酔もいりません。たてがみや尻尾から毛を数本抜いて専用のキットで送るだけで、1週間から10日後には結果が出ます。この検査ではHERDAだけでなく、GBEDやHYPPなど全部で6つの遺伝病を同時にチェックしてくれます。結果は3パターン:N/N(正常・非キャリア)、N/HRD(キャリア・無症状)、HRD/HRD(陽性・発症)。費用は日本円で約2~3万円ほど。高いと感じるかもしれませんが、生涯に一度受ければ済むものです。AQHAに登録する馬は繁殖前にこのパネルテストを受けることが一般的になっています。私も知り合いのブリーダーに「繁殖前に必ず全頭検査する」と断言している人がいます。一度検査すれば、後悔するよりずっといい——そういう考え方です。
A: 残念ながら完全に治す方法はありません。でも適切な管理で馬に快適な生活を送らせてあげられます。まず絶対に守るべきは日光と摩擦からの保護。特に背中と肩の部分にはUVカットのラグを必ず着せましょう。夏場でも薄手の通気性の良いラグを使えば、日焼けと擦れの両方を防げます。馬具も重要で、普通の鞍では圧力が強すぎるので、圧分散に優れたトレッキング用の鞍や特殊なパッドを使う必要があります。エアクッション入りの鞍パッドを特注している馬主さんもいます。傷ができてしまったらすぐに消毒して清潔に保ち、抗菌軟膏や医療用の粘着性の低い包帯で保護します。症状が重い馬の場合は、痛みが取れず感染を繰り返し、生活の質が著しく低下することがあります。獣医さんと相談して安楽死を選択する馬主さんもいます。それは決して「飼い主の諦め」ではなく、馬への思いやりから出た苦渋の決断です。症状が軽い馬なら長期間生きられる例もたくさんあるので、獣医さんとチームになって、馬にとって何が一番幸せかを常に考えてあげてください。
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